Destiny ~Catastrophe or Ribirth ~ 3

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 第三章 魔術

ふと目を覚ますと、そこは私の部屋だった。
「あれ?私確か大広間でそのまま寝ちゃったはず…」

枕元を見ると置手紙があり、それにはこう書かれていた。

『大広間で寝ていたから部屋まで送って行ったよ。風邪を引かないようにね。
まだ少し休んだほうがいいんじゃないのかい?

追伸:君が心配していた件だけど、大丈夫だったよ。
カオス様も、たまの休日を喜んでおられた。
ルキア』

どうやらルキアが部屋まで運んできてくれたらしい。
疲れが残っていてボーっとしていると、テラ達がやってきた。

「リリア様?大丈夫ですか?」
「え?」
「疲れがたまって、倒れこんだまま眠ってらしたのでしょう?
ルキアさんがそうおっしゃっていました」
「うん、まだ少し疲れが残ってはいるけどだいぶ良くなったよ」
どうやらルキアが私を部屋に運んだとき、テラ達はその様子を見ていたようだ。

「でも素敵でした・・・眠り込んだリリア様を抱き上げるルキアさん。まるで、姫を守る騎士みたいでしたもの」
まだ幼さの残るテラには夢見がちなところがあるが、今回の出来事は彼女には『騎士』のように見えたのだろう。

それにしても・・・姫抱きだったのね・・・。私はてっきり肩に担いでかと・・・。うーん、気を遣ってくれたんだねきっと。

「あー・・・でも、何か考え込んでいたような顔してたわ」
ナディアは気になった点をポツリと言った。
「そういえば・・・そんな感じも見受けられましたわ・・・」
テラもナディアの話にうなずいた。
「?」
一体どうしたんだろう?少し心配だなあ。でもルキアに直接尋ねる訳にもいかないし。

「ところで私、どのくらいの時間眠っていたの?」
私はふと疑問に思っていた点を2人に聞いてみた。
「ええと・・・確か・・・・・・4時間ぐらいでしたよね、ナディアさん」
「そうだねえ・・・まあ、そのくらいだったわ」
4時間くらいか・・・・・・。まだ疲れが残っているのも無理ないか。
「じゃあ、今はまだ夕方ぐらいなのか。
・・・・・・まだ疲れが残っているから、今日は早いけどもう休むわ私。明日も朝は早いし」
「それじゃ、あたし達はこれで」
「お休みなさいませ、リリア様」
「うん、おやすみ~」

2人が部屋から退室していくのを見届けた後、私はふと考えた。
――――もしかしたら『思いつめていた』っていうのは・・・
この前ルキアの様子が少しおかしかったのも関係あるのかしら?
そうは思っても、それ以上考えは浮かばないし、疲れの波が来て眠くなったので私は早々に床に就くことにした。

同時刻。リリアを部屋まで送り届けた後、ルキアは・・・・・・
自室にこもって考え事をしていた。
「ふう・・・・・・」
それは恋を煩った者特有のため息であった。

ルキアは、自分の心にリリアに対する恋心が芽生えている事は自覚していた。だがその相手、リリアは幸いなことにまったく気付いて
いない。
彼女は、元は人間である。種族が違うのである。
魔族と人間・・・一族に迎えられた人間では寿命も違いすぎる。

ルキアはその『種族の違い』に思い悩んでいた。
(・・・やっぱり、リリアはここにいるより人間として外の世界で暮らしていくのがいいかもしれないな・・・・・・。リリアの他にも人間で我
々の一族に迎えられた者もいるけど、彼女はその他の者達よりも違う何()かがある。ここにいても、彼女のためにはならないので
は・・・・・・。)

しばらく考え込んだ後・・・。
「よしっ。計画を実行に移さなくては・・・」

そう言って、自室を出て、こっそりと遺跡を抜け出した。
それは、夜になってまだ間もない頃であった。

「・・・おや・・・・・・?あれは・・・」
独り言のように呟く者がいた。
「あれはルキアではないか・・・・・・。
なぜこのような時刻に外出を・・・・・・?」
カオスは、一族の1人、ルキアが宵闇に紛れて外出したのを見逃さなかった。一応、遺跡の出入り
は自由なのだが(人間は、神魔融合一族を恐れているので近寄ってはこない。人とは、
自分達にない力を持つ者達、とりわけ、神や魔を恐れたり敬ったりする者が多い。)闇に紛れて外出する者などここ数千年来いなかっ
たのである。

闇に紛れる様に外出する理由・・・・・・。
カオスはルキアがある行動を起こし始めたことを感じ取った。

「ふむ・・・。どうやら思い悩んでいたようだが、ルキアは自分なりに行動を起こし始めたようだな。
リリアを一時下界に・・・か。・・・彼女を一時下界に住まわせることは、世界のあり方、人・神・魔それぞれの存在理由、意義を学ぶには良
い機会だな」
ただひとつ(この場合、カオティック遺跡に住む神魔融合一族の世界観)のみに精通しているより、
すべての世界を理解した方が、リリア本来の宿命にとって大きな手助けになるであろう。

そして、このカオスの後継者になるにあたって良い経験を得る事ができる。
ルキアのこの行動に関して、悪い予知は無い・・・。
むしろ、リリアを我が後継者として育てるにあたって、利点が多い。

それにしても・・・ルキア・・・私に相談も無く無断でリリアを下界に住まわせようとするとはな。
「・・・・・・ルキアの行動・・・今回は目をつむるとするか・・・」

―――それに・・・
リリアは、一年ぐらいで我々一族の元へと戻ってくるのではないかと私の脳裏にイメージが浮かぶ。

「このイメージが確信に近づくように、旅の際の道標をそれとなく造っておくか・・・」

そう言ってカオスは精神を集中させ、遺跡付近、そしてその他各地、世界中に色々な道標を作り上げた。
それは情報提供者であったり等様々な形をしている。

カオスは神と魔の両極性を持つ者。こういった類の魔術は大得意なのである。

「さて・・・。これから運命はどう転ぶのか・・・」
フフッ・・・とかすかに笑いそして・・・
「リリアにも、そろそろ攻撃魔法などの基礎を教えておくか。今は巫女としての必須魔法しか習得していないからな・・・。旅には不向きと
いえよう。

旅の間に、基礎レベルからどれだけ実力が上がるか・・・。
早速、明朝から教え始めるとするか」

そう言って、カオスは使い魔を呼び出し、明日から巫女の仕事の前に魔術の修行を始めるということをリリアに伝えに行くように命じた。

(寝ているだろうなあ・・・。起こすのは忍びないけど、
我が主の命だし。)
使い魔は申し訳なく思いつつも巫女の居住区へと降り立った。

リリアの気配を探ってみる。・・・・・・やはり眠っているようだ。
(・・・・・・仕方が無い・・・。)
使い魔は意識を集中させリリアの夢枕に立ち、用件を告げるとそのまま主の元へと帰っていった。

「ふああ・・・・・・ねむ・・・」
まさかカオス様の使い魔が夢枕に立つとは思ってもみなかったのでびっくりした・・・。

(しかも、明朝日の出の頃に魔術修練のため参じる様にって・・・
これから毎日修練かしら。)

翌日―――
私は、巫女の仕事の前に魔術を学ぶためにカオス様の元へと赴いていた。仕事の合間にレクチャーを受ける時もまれにあるだろうとは思う
けど、今日はまだ流石に昨日の疲れがまだ残っている
。 (流石に今日は・・・日の出と同時刻のレクチャーはきついかも・・・・・・。)

これから魔術の講義が始まるのだけれども・・・私に使いこなせるのかな?一族の者でもない、拾われ者の人間の私に・・・。

まあ、人間からこの一族に転生した人達でも魔術が使える人もいるみたいだけど・・・・・・。
でも、皆が使えるという訳でもないらしいからな・・・。まあ、見込みがあるっていう事で、教えてもらえるという話は以前謁見者の1人か
ら聞いたことはあったけど。
(本当に私に使えるのかな?)
「おお、来たなリリア」
考えながら歩を進めていたら、いつの間にか謁見の間に着いていた。
カオス様の呼びかけでそのことに気がついた。

ま、考えていても仕方が無い。実践あるのみ!
さて、今日教わるのは何かしら?
「おはようございます、カオス様。本日から魔術の講義と伺いましたが・・・私に魔術が扱えるのでしょうか?」
「うむ。素質は充分にある。
講義によって、魔術の発動のさせ方、そして数々の魔術それぞれの性質を理解し実践していくことで上達していく。
・・・・・・まあ、はじめは誰でも基礎的な魔術から修練を積むがな。
お前も例外ではない」
「はい。―本日の講義、よろしくお願いします」
挨拶をした後に、一冊の本が手渡された。

「この本は基礎レベルの魔術に関して書かれた魔術書だ。
講義の間使う、いわば教材だな。基礎レベルの魔術すべてが書かれている。呪文・その魔術についての理念も記載されている。
修練の際に使ってもよし、講義後、自己で修練をするときに読んで理解を深めるのも良し。自由に使え」
「はい。―早速ですが、本日の講義の魔術は、一体・・・―?」
早速私は魔術書を開き、カオス様に尋ねた。

「―そうだな・・・今日は火系魔術の基本にしよう。
実技はこの部屋ではなく、外で行う。まずは外に出るか。
先に実技で手本があった方が理解しやすいであろう」
「はいっ。よろしくお願いします!」
そう言って私はカオス様の後に続いて、神殿の奥から程近い荒野へと移動した。

「さて、それではこれから実技をはじめよう。今日は火系魔術の基本『フレア』の講義だ。魔術書に基本的理念が書かれている。
実技の後の理念講義の際に概念や仕組みについて教えるが・・・」
言葉を区切った後、何かを呼び出す仕草をするカオス様。
すると、何も無かった空間に突如として何かが現れた。

「お呼びでございますか?マスター」
カオス様の使い魔が現れた。
「うむ。お前を呼んだのはほかでもない。リリアに『フレア』の手本を見せてやって欲しい。火の精のおまえが一番適任だろうと思ってな」
「リリア・・・・・・。ああ、例の娘ですね?」
「そうだ。・・・・・・私が直々に術を放っても良いのだが、やはりきたるべき時まで、力はなるべく使わないようにしないといかんのでな」

―?何やらカオス様は使い魔と話し込んでいるみたい。
小声で会話しているようだから私には聞き取れないけれど。
何やら手順などの段取りを打ち合わせしているみたい・・・?

「リリア」
「―ッ、はい!」
二人の様子を眺めていた時にふいに呼びかけられて私は驚いた。
「今日の講義の『フレア』はこの者に手本を示してもらうことにする。
サラマンダ、早速始めてくれ」
サラマンダと呼ばれた使い魔はカオス様の命に従い、手本を私に示そうと側に来る。

「よ、宜しくお願いします」
私はサラマンダに会釈をした。
「初めまして。早速ですが実技に移りますね。
今日の魔術は火系術の基本になります。これから呪文を詠唱して発動させますので見ていて下
さい。あ、後ほど貴女にも術を実践してもらいますので良く覚えて下さいね」
「は、はいっ!」
(見て覚えるのか・・・。出来るかな・・・。)

サラマンダは両手を前に差し出し、精神を研ぎ澄まし、呪文を唱えた。

―――我が手に集え四大元素
炎のエレメントよ
我が言の葉に答えよ―――

「―――フレア!」
すると、サラマンダの手のひらの先で炎が生じた。

「これが火系魔術の基本です。この炎で敵にダメージを与えます。また、攻撃魔術としても使いますが、
この術は力の加減にもよりますが日常生活にも使えます」
「たとえば?」
「たとえば。旅に出た時など野営のときに焚き火を焚く際の火種など」
便利なものだ。でも、扱いには細心の注意が必要だな・・・。

頭に叩き込んでおこう。

「まず、フレアの概念はこのような感じになります。・・・・・・カオス様、次はリリアに実践に移ってもらっても宜しいですか?」
「そうだな。リリア、発動させてみなさい」
「は、はいっ」
ええと・・・・・・正面に手のひらを差し出して・・・
意識を集中させて、呪文を唱える。
「フレア!」
すると、『ボワッ!』と勢い良く炎が生じた。
――――出来た・・・。ちょっと威力が出過ぎちゃったけど。

「ほお・・・・・・初回にしては威力があるが、発動できたではないか」
良きかな良きかな。といったようにカオスは何度もうなずいた。
「威力のコントロールは、術の修練を重ねていくうちに身につくでしょう」
――――力加減のコントロール・・・・・・こればかりは講義でも教えることが出来ない、自身でつかまなけらばならない点である。

サラマンダはそう呟いた。
―――なるほど・・・。確かに、コントロールは自分自身にしか分からない感覚だものなあ・・・。

私は、その後何回か同じ動作を繰り返し、フレアの練習をした。

「ふむ。そろそろ神殿に戻り、魔術書の講義に入るか。講義が終わり次第通常通りの時刻に職務に移れるだろう」
そう言ってカオス様はこの場所へ来たときのように移動するため移動術を行使し始めた。
私は練習を終わらせ、カオス様の移動術の有効範囲へと向かった。

そして、数秒もたたぬうちに神殿へ戻ってきた。
・・・・・・移動術って、やっぱりすごいな。

「さて、今から魔術書の概念の講義を始めるとしよう。サラマンダ、ご苦労だったな、もう戻って良いぞ」
そう言ってカオスはサラマンダを下がらせた。

講義が終了し、職務に戻ったのは概念の基本を学んでから2時間後だった。
・・・・・・通常の開始時刻に間に合ってしまうのには驚いた。それだけ要点を重点的に学べたのだろう。
あとは、一日の終わりに学んだことを復習していこう。

―――さすがに、居住区では実技は行えないけど。
これからは講義が一通り終了するまで日の出から講義、講義終了後は職務、職務終了後は復習、というサイクルが続きそうである。
(それにしても、なぜ急に魔術を教えてもらえる事になったのだろう。)
今度、聞く機会があったらカオス様に尋ねてみよう。

職務が終わり、自室に戻ってから私は今日学んだことの復習に入った。

今日学んだ概念では、魔術体系には四大元素があり、『火・水・風・土』がそれにあたるということ、四台元素のほかにも魔術体系がある
ということ。回復魔法にも上級術がある等である。
そして、四大元素などの魔術には基本・中級・上級とランクがあり、ランクが上がるにつれて発動までに時間がかかったり、消費魔力の差
があったりなど色々あるということも学んだ。

それらを忘れないように、今日の講義を思い出しながら何度も魔術書を読み返す。

―――やっぱり、理念や概念を深く理解するには教本を熟読しないとね。
納得いくまで復習を終えてから私は眠りについた。

そして、講義開始から4日が経ち、私は四大元素魔術の基本それぞれをマスターすることが出来た。
どうやら自分で考えていたよりも素質があるのだろうか・・・。

(この4日間でリリアが修めた魔術は火系基本の『フレア』・水系基本の『アクアクリエイト』・風系基本の『ストーム』・土系基本の『ロックドロップ』、
そしてそれぞれ威力調整可能。各属性の中級術を1つずつ。あとは、巫女として必須な回復・治療魔術は巫女になってから習得済み分か・・・・・・。
やはり他の者達に比べると素質レベルは遥かに上だな。)
カオスは講義を行うたびに思っていた。
呑み込みが早い上に真面目な気質も手伝ってか日々の修練も欠かさない。
(ふむ・・・。次は、上級術を1つ学ばせてみるか。)
――――攻撃魔術に回復魔術・・・これだけ使いこなせれば基本は十分だろう。
カオスはそう考えた。

「カオス様、ずっと気になっていたのですが・・・何故魔術を教えて下さるのですか?」
私は不思議に思っていたことを聞いてみた。
「・・・それは、おまえに必要な事だからだ。そして、おまえには魔術の素質が十分にある。
これから数多くの試練が起こるだろう・・・。特技は試練を乗り越える手助けになる。占いの能力であれ魔術であれな」
「試練・・・ですか?―――それは一体・・・?」
「内容までは私の予知には無いがな。まあ、とにかく修練に励むことだ。

さて、今日は上級魔術の1つの講義を行うとしよう」
そう言ってカオス様は私を連れて神殿の奥から程近い荒野へと移動した。

「さて。今日は火系魔術でも魔力消費の大きい上級術『ダークフレイム』の講義だ。
基本から中級は修練を積めば人によりけりだが呪文詠唱がなくとも発動させることが出来るが上級は必ず呪文詠唱が必要になる」
そう言ってカオス様はサラマンダを召喚した。
「上級術は術者と行使する術の相性にもよりますが魔力の消耗も激しくなります。分かりやすい例として、私は火属性の行使は消耗も軽減
されますが反する属性はまったく行使出来ない、といった具合です」
サラマンダはとても分かりやすく説明をしてくらた。確かにサラマンダは火の精。
相反する水属性は相性が悪い。
私は、二人の説明を一生懸命記憶した。

サラマンダの呪文詠唱が始まる。

――久遠の時を超え
いかなる時空に逃げ込むものも
我等に敵対する全ての者に
久遠の業火で等しく滅びを与えたまえ――

すると、サラマンダの両手にかつて無いほどの魔力が凝縮されていく。

「ダークフレイム!」
詠唱が終わり、術が発動する。

一気に両手からすさまじい黒炎が解き放たれる!

ゴオオオオオオオオオォォォォォォォッ!

荒野一面にすさまじい炎が広がり、一斉に燃え上がった。炎が消えると、その威力の凄さに圧倒される。
術が炸裂した場所は大きく陥没し、黒炎が広がったあたりは焦土と化していた。

「カ、カオス様?こんなに凄い術、私なんかが扱えるのでしょうか?」
先ほどの威力を目の当たりにした私は不安を覚えた。

「なに、大丈夫だ。さ、呪文は覚えたか?発動原理は基本のものと一緒だ。イメージを具現化するように呪文を唱え、
サラマンダが行った手本のように発動させる。」
「は、はいっ!」
カオス様のアドバイスに基づき手本の通りに私は呪文を詠唱する。そして・・・
「ダークフレイム!」
術を発動させた。

ゴオオオオッ!

手本よりは規模は小さいが、黒炎が生み出され地面に炸裂した。

「ふむ、初めてにしては上出来だ。きちんと黒炎が発生している」
「そうですね。修練4日目で黒炎を呼び出すことが出来る者は滅多にいません」
「そうなのですか?」
私は2人の会話を聞いて問いかけた。
「ああ。あとは修練と経験で威力は増していく。
初めは今の威力だが実践で使っていくうちに段々とな」
「はい!あ・・・でも魔術は周囲に何も無い場所で行使するのが一番ですね。街中などでは周囲に多大な被害が想定されます」
私は気付いたことを述べた。
「その通り!状況に合わせて行使しなければ意味が無い。その点に気が付かなければ大変なことになる」
「そうですよね・・・。状況に合わせて行使する・・・大切なことですね」
私は頭の中にこの事を叩き込んだ。

「さて、ダークフレイムの実技はこれまでだが、おまえに授けるものがある」
そう言ってカオス様は結界を張り、呪文詠唱を始めた。

――――我が張りしこの結界を媒介にし
この世界へ
我が名・我が命において召喚す
いでよ!砂竜デュルク!――――

結界内が光り輝き、使い魔が召喚される。
それは、まだ幼い砂竜であった。

「おまえには、この砂竜をつかわそう。今は幼いがおまえの魔力が上昇していくに連れてデュルクも成長する」
「へえ~・・・」
それじゃあ、デュルクのためにも頑張って修練しなくちゃ。
「よろしくね、デュルク」
私は早速デュルクに挨拶をした。すると、デュルクも『よろしく!』と言わんばかりに鳴き、
私の手のひらへと移る。結構可愛いものである。

ドラゴンが可愛い?と思われるかもしれないが、
まだ幼いので手乗りサイズで可愛いったらありゃしないんだなこれが。
「さて、今日の実技はこのくらいにするとしよう。
神殿に戻り、先の魔術の呪文について講義を執り行う」
「はい!」
私達は荒野から神殿へと戻っていった。

戻ると同時に、職務開始時間が近くなるまでの間呪文についての講義が始まる。
「ダークフレイムは、魔界の炎だ。そして魔界は久遠の時を越えた次元にある。その魔界から炎を呼び出すためにある呪文の句は」
「〝久遠の時を越え″ですね」
「そうだ。そして、魔界の炎を指しているのが〝久遠の業火″である。」

なるほど。この呪文にはこういった意味が備わっているのね。
意味をきちんと解釈しておくのが何よりも重要そうである。そこで、ふと疑問が浮かぶ。
「あの、カオス様」
「どうした?」
「呪文の意味をきちんと解釈しているのといないのでは、魔術の威力は違うのでしょうか?」
私は疑問点を解消するべく質問した。
「そうだな・・・・・・攻撃魔術は、上級になればなるほど意味を解釈して使わないと、自身の魔力では扱いにくくなり、
時には己の力を暴走させてしまうものもいる」
うわ・・・・・・上級術を暴走させたら大変なことになる。

「だが、きちんと解釈できていれば暴走は起きない。そして威力についてだが、これはそんなに大差はないが、
行使していくうちに少しは威力が上がっていくだろう。先にも述べたように術の理念をきちんと解釈していないと暴走し、
時には術者自身に跳ね返り滅ぶ」
(げげげっ)
「他にも、魔術を習っているもの、例えば人間。
人間は魔術の素質があるものしか使えない。呪文の意味を理解してから行使するものが大多数だがそうでない愚か者もいる。
後者のほうは性質が悪い。周囲に多大な影響を及ぼす術を使い、暴走させると・・・」
「周囲のものも甚大な被害を受ける・・・」
「そういうことだ。我等の場合は自滅させないためにも人魔に魔術を教える際は必ず呪文の意味を正しく解釈させる。
だが、人間が人間に教える時はかなりまちまちみたいだな。」
・・・・・・結構アバウトなんだな・・・人から人へ伝わるのは。

それからも、約一時間にわたり講義は続いた。

第三章 魔術 了。

オフライン初出:2007年3月18日・加筆2011年10月4日